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Linuxカーネル脆弱性 CVE-2026-98432:ネットワーク越しに突かれうるTCPの欠陥(CVSS 9.8)。修正版を入れて再起動し、MPTCPも確認

LinuxカーネルのIPv4 TCPの解放後使用の脆弱性CVE-2026-98432(CVSS 9.8)。修正されたカーネルの版、Debian・Ubuntu・Red Hat・SUSEの対応状況、今日やることを整理します。

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目次

対象:Linuxサーバー、とくにインターネットに公開したサーバーを運用している人と、Go言語でネットワークサービスを作っている人。本記事はNVDのCVE情報、Debian・Ubuntu・Red Hat・SUSEの各ページ、Go言語の開発チームのセキュリティチームの案内、BleepingComputerの報道にもとづく解説で、攻撃手順やコードは扱いません。

進行中:新しい発表があればこの記事を更新します

対象者

Linuxサーバー、とくにインターネットに公開したサーバーを運用している人と、Go言語でネットワークサービスを作っている人。

影響が確認された範囲表で見る ↓
  • 欠陥の存在
  • 上流の修正版
  • Debianの修正版
未確認事項
  • UbuntuとRed Hatの修正版カーネル
  • MPTCPを使わないサーバーでリモートコード実行が可能か
  • 実際の攻撃の有無
さらに1件
  • NVD自身の評価(状態は「受領」)
今やること手順を見る ↓
  1. 外からIPv4のTCPで接続を受けるLinuxサーバーを洗い出す
  2. 修正版があるものから入れる
  3. 再起動して、動いているカーネルを確かめる
さらに2件
  1. 修正版がまだないなら、配布元の一時しのぎと公開範囲の絞り込み
  2. MPTCPで待ち受けているサービス(Goのプログラム含む)を探す
最終確認日時
2026年11月1日時点
発表の続報予定と確認の記録

Red Hatの案内は状態を「進行中」とし、修正を急いでいると書いています。Ubuntuは修正を準備中としています。Debianは修正版のカーネルを出しています。

今日やること

1

外からIPv4のTCPで接続を受けるLinuxサーバーを洗い出す

インターネットに公開したLinuxは、コンテナのホストや仮想マシンも含め、ほぼすべて対象です。CVE情報の評価は、アカウントも利用者の操作も要らない攻撃(CVSS v3.1で9.8)とされているため、インターネットから届くサーバーを最優先にします(当サイトの判断)。

2

修正版があるものから入れる

Debianはbookwormで6.1.190-1、trixieで6.12.113-1(セキュリティ更新)です。SUSEは、ストリームによって提供済みと準備中があるので、SUSEのページで使っている製品を確かめます。UbuntuとRed Hatは、出典のページを見張ってください。11月1日時点では修正版のカーネルが載っていませんでした。

3

再起動して、動いているカーネルを確かめる

再起動のあとで uname -r を実行します。入れただけで動いていないカーネルは守ってくれません。配布元のライブパッチがこのCVEに対応するなら、それでも構いませんが、先に配布元のページで確かめてください。SUSEは、ほとんどのストリームでライブパッチを準備中としています。

4

修正版がまだないなら、配布元の一時しのぎと公開範囲の絞り込み

Red Hatは、IPオプション付きのIPv4 TCPパケットを受信時に捨てるフィルターを挙げ、露出は減らせるが修正の代わりにはならないとしています。先に試験し、カーネルを直したら外します。BleepingComputerが挙げる対策として、できる範囲で信頼できるネットワークやIPアドレスだけに公開を絞る方法があります。

5

MPTCPで待ち受けているサービス(Goのプログラム含む)を探す

Go言語の開発チームのセキュリティチームによると、Go 1.24以降はLinuxの待ち受けでMPTCPが既定で有効なので、誰も選んでいなくてもGoのサービスがMPTCPを使っていることがあります。プログラムごとに止める方法は壊れやすく、いちばんの対策は修正版のカーネルだと同チームは説明しています。これは代わりではなく、追加の手段として行います。

修正版のカーネルあり

Debian 12・13、SUSEの一部の製品。入れて再起動し、uname -r で確認

修正は準備中

Ubuntu、RHELと関連製品。配布元の一時しのぎと公開範囲の絞り込み

あわせて確認

MPTCPの待ち受け(Go 1.24以降のサービスを含む)

11月1日時点で修正がどこまで届いているか。自分の配布元の行を確かめる。

修正版の一覧

9.8
CVSS v3.1(Linuxカーネルの採番機関。NVDに掲載。Ubuntuも同じ)
ネットワーク
攻撃元区分:遠隔、権限不要、利用者の操作不要
10月15日
CVE公表(NVD)
KEV未登録
米CISAの一覧、11月1日に確認
カーネルの系統影響を受けなくなる版発表元
5.105.10.272NVDのCVE情報(カーネルの採番機関)
5.155.15.223同上
6.16.1.190同上
6.66.6.159同上
6.126.12.113同上
6.186.18.56同上
7.27.2.10同上
7.3以降元の修正で対応済み(Debianは上流の7.3-rc7)NVD、Debian

NVDによると影響範囲はカーネル4.4までさかのぼります。系統ごとに修正された版が違うので、上流の番号ではなく、配布元のパッケージの版で判断してください。

配布元2026年11月1日時点の状態
Debian 12(bookworm)修正済み:6.1.190-1(セキュリティ更新)
Debian 13(trixie)修正済み:6.12.113-1(セキュリティ更新)
Debian testing・unstable修正済み:7.2.12-1、7.2.14-1
Ubuntu 26.10・26.04 LTS・24.04 LTS・22.04 LTS影響あり、修正は準備中
Ubuntu 20.04・18.04・16.04影響あり、版の記載なし
Ubuntu 14.04影響なし
RHEL 8・9・10、OpenShift影響あり。Red Hatのページに修正版の記載なし。案内の状態は「進行中」
SUSE Linux Enterprise Server 16.0、15 SP4〜SP6 LTSS、Micro 5.4・5.5・6.2修正版を提供済み
SUSE Linux Enterprise Server 15 SP7、ライブパッチのほとんどのストリーム準備中
SUSE Linux Enterprise Server 12 SP5、Micro 6.0・6.1影響あり

SUSEは自社ページの内容が未完成または古い場合があるとしています。Red Hatは、RHELのカーネルを使う製品(RHEL CoreOS・OpenStack Platform・Virtualizationなど)も影響を受けるおそれがあるとしています。クラウドや機器など、ほかの提供元のカーネルは、それぞれの予定で修正が出ます。

何が公表されたのか

IPv4 TCPでのIPオプションの解放後使用(CVE-2026-98432)
CVE
CVE-2026-98432。2026年10月15日公表。NVDの状態は「受領」、最終更新は10月31日
種類
解放後使用(CVE情報にCWEの記載なし)
深刻度
カーネルの採番機関がCVSS v3.1で9.8(AV:N/AC:L/PR:N/UI:N)。Ubuntuは「高」で9.8。Red Hatは「Critical」(CVEのページでは暫定9.8)。SUSEは「重要」で8.1(攻撃の複雑さを「高」と評価)
場所
カーネルのIPv4 TCP処理。IPオプションの構造体(inet_opt・ireq_opt)を、読み手を待たずに解放しており、ip_options_build() で解放後使用になる。要求ソケットの移し替えでの同種の問題も直された
きっかけ
Debianのトラッカーによると、再送されたSYNが子ソケットの作成と重なり、解放後のオプションを読む場合がある。主な問題はIPv6には影響しない
修正
これらの構造体を、RCUの猶予期間のあとに解放する(kfree_rcu())。NVDは安定版の8つのコミットを挙げている
悪用
確認した範囲で、実際の攻撃は確認されていない。11月1日時点でCISAのKEVには未登録

やさしく言うと、接続のオプションを入れたメモリを、ほかの処理がまだ読めるうちにカーネルが手放していました。手放したメモリは別の用途に再利用されることがあり、そこを読んでしまう欠陥は、クラッシュや、カーネルの権限でのコード実行につながりえます。

Red Hatは主な影響を、システムのクラッシュによるサービス拒否(DoS)か、メモリ破壊の可能性としています。CVEのページは、Criticalとした理由を次のように説明しています。認証のない遠隔の相手が、標準的なIPv4 TCP通信でカーネルのメモリを壊したり、即座にクラッシュさせたりでき、確実なコード実行にはメモリの精密な制御が要る、という内容です。BleepingComputerは、Red Hatがサービス拒否の可能性として5.9と評価したと伝えていますが、当サイトが11月1日に確認したRed Hatのページはいずれも、Criticalと暫定の9.8でした。評価は出典ごとに違い、変わることもあるので、使っている製品のページを確かめてください。

MPTCPでの実演とAIの観点

BleepingComputerは10月30日、AI企業の研究チームが、MPTCPで待ち受けるLinuxサーバーに対し、実験環境でroot権限のリモートコード実行を実演したと報じました(同社自身の報告にもとづくもので、報道機関は検証していません)。攻撃コードは、その企業の未公開のAIモデルが作ったとされています。Go言語の開発チームのセキュリティチームも、10月29日にoss-securityのメーリングリストへ転送された案内で、MPTCPで待ち受けるサーバーでリモートコード実行が示されたこと、そしてこの欠陥はMPTCPに限らないことを述べています。当サイトは実演そのものを確認しておらず、リンクも載せません。

BleepingComputerの記述にもとづく、示されていること・示されていないことは次のとおりです。

  • 実演されたコード実行にはMPTCPの待ち受けが必要だった
  • MPTCPの待ち受けがないサーバーでのリモートコード実行は、公には示されていない
  • 報道の時点で、実際の攻撃は確認されていない

MPTCPはカーネルでは任意の機能ですが、Go言語の開発チームのセキュリティチームによると、Go 1.24以降はLinuxの待ち受けで既定で有効になります。Goでネットワークサービスを作っている場合は、自分のサービスの待ち受けを確かめてください。

守る側の教訓は速さです。公開された修正からAIが動く攻撃コードを作れるなら、修正が公になってから攻撃が可能になるまでの時間は、これまでより短くなるかもしれません(当サイトの判断)。次の定期メンテナンスを待たず、配布元の最初の修正版で更新する理由になります。

分かっていること・分かっていないこと

項目発表の内容状態
欠陥の存在IPv4 TCPでのIPオプションの解放後使用。カーネルの採番機関がCVSS 9.8、Ubuntuは「高」の9.8、Red Hatは「Critical」(暫定)、SUSEは8.1確定(カーネルの採番機関、NVD、各配布元)
上流の修正版5.10.272から7.2.10まで(上の表)確定(NVDのCVE情報)
Debianの修正版6.1.190-1と6.12.113-1確定(Debianトラッカー)
UbuntuとRed Hatの修正版確認したページには未掲載調査中(各配布元は準備中)
MPTCPの待ち受けでのリモートコード実行AI企業の研究チームが実験環境で実演したと報じられている(同社自身の報告)報告あり(BleepingComputer、Go言語の開発チームのセキュリティチーム)
MPTCPのない環境でのリモートコード実行公には示されていない。Go言語の開発チームのセキュリティチームは似た攻撃の可能性を警告調査中
実際の攻撃確認されていない。11月1日時点でCISAのKEVには未登録調査中
NVD自身の評価未付与(状態は「受領」)調査中

出典

2026年11月1日に確認しました。

更新履歴

2026-11-01:初版。11月1日時点のNVD、Debian・Ubuntu・Red Hat・SUSEの各ページ、Go言語の開発チームのセキュリティチームの案内、BleepingComputerの報道にもとづく。

次に読む

最新の速報

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よくある質問

QCVE-2026-98432とは何ですか?
A

LinuxカーネルのIPv4 TCP処理にある解放後使用の脆弱性です。接続要求に付いたIPオプションを、他の処理がまだ読む可能性があるのに通常の方法で解放していました。たとえば、再送されたSYNが届いたときに、子ソケットの作成と重なる場合です。カーネル開発チームの採番機関はCVSS v3.1で9.8(ネットワーク越し、権限不要、利用者の操作不要)と評価しています。CVE情報によると、主な問題はIPv6には影響しません。

QMPTCPを使っていないサーバーなら安全ですか?
A

それだけでは言えません。BleepingComputerが伝えた(同社自身の報告にもとづき、報道機関は検証していない)リモートコード実行の実演はMPTCPの待ち受けを使っていました。一方、Go言語の開発チームのセキュリティチームは、この欠陥はMPTCPに限らず、MPTCPの待ち受けがない環境でも似た攻撃を受けうると警告しています。BleepingComputerによると、MPTCPのないTCPサーバーでのリモートコード実行は公には示されていません。リスクはあるが、その場合は未証明、と受け止めてください。

Q実際に攻撃されていますか?
A

確認した範囲では、攻撃は確認されていません。BleepingComputerは10月30日時点で確認なしと伝え、当サイトが11月1日に調べた米CISAの悪用が確認された脆弱性の一覧(KEV)にもこのCVEはありませんでした。ただし、AI企業の研究チームによる実験環境での実演が報じられており、実際の攻撃が出るまでの時間は短いかもしれません。

Q修正されたカーネルの版は?
A

CVE情報は、5.10.272・5.15.223・6.1.190・6.6.159・6.12.113・6.18.56・7.2.10以降を影響なしとしています。配布元は修正を取り込むので、パッケージの版で判断してください。Debian 12(bookworm)の6.1.190-1とDebian 13(trixie)の6.12.113-1は修正済みです。UbuntuとRed Hatは、11月1日に当サイトが確認したページでは修正版のカーネルをまだ出していません。

QMPTCPを止めればよいですか?
A

露出は減りますが、修正ではありません。BleepingComputerは、MPTCPを止めるだけでは通常のTCP通信でも欠陥に届くため不十分と伝えています。Go言語の開発チームのセキュリティチームも、プログラムごとに止める方法は壊れやすいとしています。修正版のカーネルを入れて再起動してください。

QRed Hatの緩和策は何ですか?
A

Red Hatの案内RHSB-2026-016は、IPオプション付きのIPv4 TCPパケットを受信時に捨てるフィルターを挙げています。Red Hatは、フィルターは露出を減らせるが修正の代わりにはならない、先に試験し、カーネルを直したら外すようにと説明しています。