対象:m3.comを使っている医師などの医療従事者、製薬企業で「MR君」に関わる担当者、医療機関で事務やITを担当する人。本記事は**エムスリー株式会社の公式発表(第1報・第2報)**にもとづく解説で、攻撃や詐欺の手順は扱いません。
続報待ち:この記事は公式発表に合わせて更新します
2026年10月27日時点まだ分かっていないこと
- 原因と不正アクセスの経路の詳細
- 「サービスのご利用に関する情報」「担当関係等」に含まれる具体的な項目
- m3.com会員以外の医師の人数(25,775名の内訳)
- 対象となった製薬企業の数
- 再発防止策の具体的な内容
同社は10月23日の第2報で「引き続き調査を進め、新たな事実が判明した場合は速やかにお知らせいたします」としています。続報の時期は書かれていません。10月27日に同社のニュース一覧を確認した時点で、第2報より新しい続報は出ていません。
医師など m3.com を使う人が今日やること
エムスリーや製薬会社を名乗る連絡のリンクを開かない
同社は、同社を装った不審なメール・SMS・電話に注意するよう呼びかけています。漏えいした情報には、氏名と勤務先に加えて、取引先の製薬企業が登録していた「担当関係等」が含まれます。
一般に、この組み合わせがあると、実在する製薬会社の名前や、自分を担当している会社を正しく言い当てた連絡が作れます。講演会・Web講演会の案内、アンケートの謝礼、ポイントの付与、「お詫び」を名目にした連絡でも、リンクは開かずに、m3.comはブックマークか公式アプリから開いて確かめてください(見分け方は フィッシングとは)。
担当者(MR)を名乗る、新しい連絡先からの依頼は確かめる
「担当が変わった」「新しいメールアドレスから送る」「別のサイトで資料を見てほしい」といった連絡は、名前や会社名が合っていても、それだけで本物とは判断できません。普段やりとりしている連絡手段で担当者本人に確かめるか、製薬会社の代表窓口に自分で問い合わせてください。
パスワード・カード番号・口座情報を、連絡に応じて伝えない
同社は、同社からの個別連絡で、パスワード、クレジットカード情報、銀行口座情報等の入力や提供を求めることはないとしています。これらを聞いてくる連絡は、エムスリーを名乗っていても偽物を疑ってください。
勤務先の受付や事務にも、名指しの連絡に注意するよう伝える
メールアドレスを含むのは、m3.com会員様等25,775名のうち6名だけです。一方で勤務先は含まれているため、一般に、病院や診療所の代表電話・代表メール・郵便あてに、医師の名前を出して取り次ぎを求める連絡が考えられます。受付や医局の事務に、製薬会社やエムスリーを名乗る見慣れない依頼は本人に確かめてから回すよう、ひとこと伝えておくと防ぎやすくなります。
問い合わせは、同社のお知らせにある窓口へ
同社の第2報に載っている会員向けの窓口は「エムスリー株式会社 m3.com カスタマーサポート cs-security@m3.com」です(第1報では m3.com の問い合わせページが案内されていました)。届いたメールやSMSに書かれた連絡先ではなく、同社のニュース一覧 から開いたお知らせで確かめてください。
パスワードの変更は、同社の発表では求められていない
ログインパスワードは含まれていないとされ、同社も変更を求めていません。m3.comと同じパスワードをほかの医療情報サイトや病院の業務システムで使い回している人は、この機会に分けておくと、今後の偽サイトへの備えになります(パスワード管理アプリの選び方)。
製薬企業の担当者がやること
製薬企業の担当者2,260名についても、氏名・勤務先・一部の方のメールアドレス等の漏えいが確認されています(メールアドレスを含むのは264名)。
自社のセキュリティ担当に、対象になったことを共有する
同社は、対象の製薬企業へ同社の担当者から順次連絡しているとしています。自社に連絡が来ているかを社内の担当部署に確かめ、対象であれば、取引先や医師を名乗る不審な連絡の報告先を社内で決めておきます。
エムスリーや医師を名乗る、いつもと違う依頼を確かめる
一般に、氏名・勤務先・メールアドレスがそろうと、取引先を名乗る請求や、ログイン画面への誘導、添付ファイルを開かせる連絡が作りやすくなります。エムスリーの担当者や医療機関を名乗る連絡で、振込先の変更や新しいサイトでのログインを求められたら、普段の連絡手段で相手に確かめてください。
担当している医師から問い合わせがあれば、同社の窓口を案内する
医師から「自分は対象か」と聞かれたときは、推測で答えず、同社のお知らせと会員向けの窓口を案内します。製薬企業として独自に医師へ連絡する場合は、パスワードや個人情報の入力を求めない内容にし、偽の連絡と混同されないようにします。
何が起きたのか(エムスリーの発表より)
エムスリー株式会社は2026年10月15日に「不正アクセスによる個人情報漏えいに関するお詫びとお知らせ」を、10月23日にその第2報を、企業サイトのニュースで公表しました。以下はすべて同社の発表内容です。
2026年10月14日
同社が運営する製薬企業向けサービス「MR君」のシステムで、第三者による不正アクセスを確認。同日、一部の会員と製薬企業の担当者に関する情報の漏えいを確認し、判明した不正アクセスの経路を遮断した。10月15日
第1報。対象は「一部の医師会員様(医師会員全体の1割未満)」と「製薬企業のご担当者様(数百名規模)」とし、人数と詳細は精査中とした。10月22日
対象の会員に、登録メールアドレス宛てで順次個別の連絡を開始。10月23日
第2報。漏えいを確認した人数を、m3.com会員様等25,775名、製薬企業のご担当者様2,260名と公表。現時点で判明している不正取得経路の封じ込めは完了したとした。
- 対象のシステム
- 同社が運営する製薬企業向けサービス「MR君」のシステム
- m3.com会員様等
- 氏名、勤務先、一部の方のメールアドレス、一部の当社サービスのご利用に関する情報等、お取引先の製薬企業が当社サービスに登録していた情報(担当関係等):25,775名(うち6名はメールアドレスを含む)
- m3.com会員以外
- 一部、製薬企業から同社が預かっている、m3.com会員以外の医師の情報も含まれる(人数の内訳は書かれていない)
- 製薬企業のご担当者様
- 氏名、勤務先、一部の方のメールアドレス等:2,260名(うち264名はメールアドレスを含む)
- 含まれないもの
- ログインパスワード、保有するm3ポイント等。クレジットカード番号等は同社が保持していない
- 公開・不正利用
- 不特定多数に公開された事実や、不正利用された事実は確認されていない
- 同社の対応
- 判明した経路の遮断と防御策の強化、現時点で判明している不正取得経路の封じ込め(完了)、監督官庁への報告、対象の会員への個別メール(10月22日以降)、対象の製薬企業への担当者からの連絡
- 原因
- 公表されていない
第1報から第2報で変わったこと
対象の書き方が「一部の医師会員様(医師会員全体の1割未満)」から「m3.com会員様等」に変わり、m3.com会員以外の医師の情報も一部含まれると書き足されました。製薬企業の担当者は「数百名規模」から2,260名になりました。漏えいした情報として「当社サービスのご利用に関する情報」と「担当関係等」が加わり、会員向けの窓口は問い合わせページからメールアドレス(cs-security@m3.com)に変わりました。
分かっていること・分かっていないこと
2026年10月27日時点の、同社の10月15日・10月23日のお知らせをもとに整理しました。続報が出たら、状態の欄を書き換えます。
| 項目 | 発表の内容 | 状態 |
|---|---|---|
| 氏名・勤務先(会員等・製薬企業の担当者) | 漏えいが確認された情報として記載 | 漏えいを確認(同社) |
| メールアドレス | 会員等は6名、製薬企業の担当者は264名 | 漏えいを確認(同社) |
| 同社サービスの利用に関する情報 | 「一部の当社サービスのご利用に関する情報等」。具体的な項目は書かれていない | 漏えいを確認(同社) |
| 担当関係等 | 製薬企業が同社サービスに登録していた情報。具体的な項目は書かれていない | 漏えいを確認(同社) |
| ログインパスワード・m3ポイント等 | 含まれていない | 含まれない(同社) |
| クレジットカード番号等 | 同社は保持していない | 含まれない(同社) |
| 電話番号・住所 | 漏えいした情報の一覧にない | 記載なし |
| 人数 | 会員等25,775名、製薬企業の担当者2,260名(いずれかの情報の漏えいが確認された人の総数) | 現時点の確認数(同社) |
| m3.com会員以外の医師の人数 | 含まれるとだけ記載 | 記載なし |
| 原因・経路の詳細 | 第1報で調査中とし、第2報には記載なし | 調査中 |
| 公開・不正利用 | 確認されていない | 確認されていない(同社) |
| 個別連絡 | 会員へは10月22日以降に登録メールアドレス宛て、製薬企業へは同社の担当者から | 確定(同社) |
「記載なし」は「漏れていない」ではありません
電話番号や住所は、漏えいした情報の一覧に挙がっていないだけで、同社が「含まれない」と書いたのはログインパスワード、m3ポイント等、クレジットカード番号等です。「当社サービスのご利用に関する情報」「担当関係等」に何が含まれるかも書かれていないため、本記事では状態を分けて書いています。
氏名・勤務先・担当関係で何が起きうるか
一般に、医療従事者の名前と勤務先に「どの製薬会社が担当しているか」が結びついて知られると、次のことが起きえます(この事件で起きたという発表はありません。同社も不正利用は確認されていないとしています)。
氏名+勤務先+担当関係
m3.com会員様等 25,775名
↓→
実在の製薬会社・担当者を名乗る、勤務先あての電話や郵便
→ 普段の連絡手段で本人に確かめる
氏名+勤務先+メールアドレス
製薬企業の担当者 264名、会員等 6名
↓→
エムスリーや取引先を名乗る、ログインや添付ファイルへの誘導メール
→ リンクを開かず、ブックマークから確かめる
一般に起こりうること
- 実在する製薬会社の担当者を名乗り、「担当変更」を理由に新しい連絡先へ誘う
- 講演会・アンケート謝礼・ポイントの案内を装い、偽のログイン画面に誘う
- 「漏えいのお詫び」を装い、口座情報やパスワードを聞き出す
- 病院の受付に医師の名前を出して取り次ぎを求める電話
自分でできること
- m3.comはブックマークか公式アプリから開く
- 担当者の連絡は普段の連絡手段で確かめる
- パスワード・口座情報を連絡に応じて伝えない
- 受付や事務に、名指しの見慣れない依頼に注意するよう伝える
医療従事者の氏名・勤務先・診療科が漏えいした可能性がある事案として、同じ10月には 旭化成セラピューティクスの医療関係者向けサイトへの不正アクセス も公表されています。発表している組織も原因も別の事案ですが、医療従事者あての偽の案内への備え方は共通する部分があります。
10月21日のエムスリーのお知らせは別の件です
エムスリーは2026年10月21日、「M3PSP」サービスサイトと「1人1円ファンド」ウェブサイトの運営に使っていた外部のクラウドサービスへの不正アクセスで、両サイトのお問い合わせフォーム等から取得した情報(M3PSP 271名、1人1円ファンド 127名)が漏えいした可能性があると公表しました。同社はこの件について、自社システムへの不正アクセスは確認されていないとしています。「MR君」の件とは別の発表です。
外部のサービスに医師の情報を登録している製薬企業へ
原因は公表されていません。ここでは、公表された漏えい項目から言えることに絞ります(原因の推測ではなく、一般に見直せる点です)。
外部のサービスに何を登録しているかを棚卸しする
第2報では、製薬企業が同社サービスに登録していた「担当関係等」と、製薬企業から預かっていたm3.com会員以外の医師の情報も漏えいした情報に含まれていました。一般に、業務で使う外部サービスに登録した情報は、自社のシステムとは別の場所で漏えいの対象になりえます。どのサービスに、どの医師の、どの項目を登録しているかを一覧にしておくと、事故の連絡を受けたときに影響の範囲をすぐに説明できます。
使わなくなった登録情報を消す
担当を外れた医師や、取引が終わった施設の情報が残っていないかを定期的に確かめ、不要なものは削除します。持っていない情報は漏れません。
事故の連絡を受けたときの、医師への説明の窓口を決めておく
今回、対象の製薬企業へは同社の担当者から連絡が来るとされています。連絡を受けた後に、担当者が医師から質問を受けたときの答え方と、案内する公式の窓口を社内で決めておくと、推測で答えてしまうことや、偽の連絡と混同されることを防げます。
出典(公開記録)
本記事の事実関係は、以下の公開情報にもとづきます。公表されていない原因・攻撃の手法は推測していません。
- エムスリー株式会社「不正アクセスによる個人情報漏えいに関するお詫びとお知らせ」(2026年10月15日) — corporate.m3.com(PDF)
- エムスリー株式会社「不正アクセスによる個人情報漏えいに関するお詫びとお知らせ(第2報)」(2026年10月23日、10月27日に確認) — corporate.m3.com(PDF)
- エムスリー株式会社、同社が利用するクラウドサービスへの不正アクセスに伴う「M3PSP」サービスサイトと「1人1円ファンド」ウェブサイトでの個人情報漏えいの可能性についてのお知らせ(2026年10月21日、別件) — corporate.m3.com(PDF)
- エムスリー株式会社 ニュース一覧 — corporate.m3.com/news
更新履歴
2026-10-27:初版。エムスリーの10月15日の第1報と10月23日の第2報にもとづく。原因などの続報が出たら更新します。
次に読む
- 同じ月の医療分野の事案:旭化成セラピューティクスの医療関係者向けサイトへの不正アクセス / メドレー「アットリンク」への不正アクセス
- 偽の連絡の見分け方:フィッシングとは
- ログインの守り方:パスワード管理アプリの選び方 / 二要素認証の選び方
- 医療の事案:2026年にサイバー攻撃で診療が止まった病院
- 2026年の他の事案:情報漏えい・サイバー攻撃の一覧(国内・海外)