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身分証番号と口座番号を知っている電話は、銀行の証明にならない——南アフリカStandard Bankの情報漏えいで顧客がやること

南アフリカのStandard Bankは、氏名・身分証番号や会社登記番号・連絡先・口座番号への不正アクセスを公表し、データは公開されたとみられるとしています。銀行をかたる電話、SAFPS登録、信用情報の確認など顧客がやることを整理します。

公開日 2026-09-30 更新日 2026-09-30 最終確認 2026-09-30 19分で読める

対象:南アフリカのStandard Bank(The Standard Bank of South Africa)の個人・法人の顧客と元顧客(南アフリカに拠点を置く日系企業を含む)、そして自分の身分証番号や口座番号を知っている「銀行」から電話を受けたすべての人。本記事はStandard Bank自身の声明と、南部アフリカ不正防止サービス(SAFPS)、情報規制機関(Information Regulator)、南アフリカ政府の消費者向け情報にもとづく解説で、攻撃の手口は扱いません。

顧客が今日やること

1

何かをさせようとする「銀行」の電話は切り、自分からかけ直す

Standard Bank自身の助言は、機密情報を求める予期しないメール・SMS・電話は、信頼できる窓口に銀行へ連絡して確かめることです。実際には、電話を切り、カードの裏など自分で調べた番号にかけます。南アフリカ国内の不正利用窓口は0800 222 050(国外からは+27 10 824 2090)です。相手やSMSが伝えてきた番号には、絶対にかけ直さないでください。

2

OTP・PIN・パスワードは、相手が誰でも伝えない

Standard Bankは、電話・FAX・SMS・メールで誰に求められても、パスワードやPINを教えないよう呼びかけています。同行は以前のセキュリティ記事でも、電話でOTPを含むネットバンキングのログイン情報を求めることはない、知らない口座へ資金を移すよう電話で求めることはないと説明しています。ワンタイムPIN(OTP)は取引を承認するためのものです。読み上げることは、詐欺師の送金を自分で承認するのと同じです。

3

SAFPSのProtective Registration(無料)に登録する

同行は南部アフリカ不正防止サービス(SAFPS)への登録を勧めています。SAFPSによれば、Protective Registrationは無料で、あなたの身分証に印を付け、加盟する与信事業者に追加の確認を促します。同行の通知の表現では、誰かがあなたの身分証番号で銀行商品を申し込むと、拒否されるか追加審査に回されます。SAFPSによれば、申し込みはオンライン・メール・折り返し電話の依頼で行え、身分証の認証済みコピーと住所の証明が必要で、48時間以内に受付番号が発行されます。

4

信用情報で、開いた覚えのない口座がないか確認する

南アフリカ政府の消費者向け情報によれば、国家信用法(National Credit Act)にもとづき、登録された信用情報機関から12か月ごとに無料で自分の信用情報を取り寄せられます。見覚えのない照会や口座がないか確認し、同意していない照会があればその機関に異議を申し立てられます。Standard Bankも影響を受けた顧客の信用情報の動きを監視しているとしていますが、自分で確認すれば同行以外の貸し手も含めて見渡せます。

5

ネットバンキングのパスワードを変え、アプリの保護を有効にする

同行はすべての顧客に、デジタルバンキングとSNSのパスワードを変更すること、強く使い回さないパスワードを使うこと、Standard Bankアプリで生体認証を有効にすることを求めています。銀行のパスワードを他でも使っていたなら、そちらも変えます。使い回しをやめるにはパスワードマネージャーが便利です。

6

法人の顧客:振込先の変更は、必ず電話で確認する

公開されたとみられる項目には、会社登記番号、VAT登録番号、B-BBEE区分、口座番号が含まれます。企業にとっては、偽の請求書や「振込先変更のお知らせ」、経理担当への電話を本物らしく見せるのに十分な材料です。取引先や自社の口座情報の変更は、手元に登録済みの番号へ電話して確認する(メールに書かれた番号は使わない)ことを社内ルールにしてください。日本の本社と現地法人の間の送金指示も同じです。法人・投資銀行部門(CIB)の顧客は、担当のサービス窓口かリレーションシップ・マネージャーに連絡するよう案内されています。

7

被害が出たら:銀行、SAFPS、情報規制機関へ

すぐに同行の不正利用窓口に連絡し、以降の取引を止めてもらいます。身分証を悪用された場合、SAFPSにはProtective Registrationに加えてなりすまし被害者(Victim of Impersonation)の登録があります。個人情報の取り扱いについての苦情は、南アフリカのデータ保護機関である情報規制機関(Information Regulator)が、オンラインのeServicesポータルでPOPIA(個人情報保護法)に関する申し立てを受け付けています。

相手が知っているかもしれないこと(漏えい)

氏名・身分証番号または会社登記番号・電話、メール、住所・口座番号・VAT番号、B-BBEE区分

→ 何の証明にもならない。これを理由に信じない

銀行が決して求めないとしていること

パスワード・PIN・OTP・知らない口座への資金移動

→ 求められたら切って、0800 222 050に自分でかける

同行によれば、取引系・基幹システムへのアクセスはなかった

詐欺電話の相手がすでに知っているかもしれないことと、本物の銀行が決して求めないこと(Standard Bankの声明をもとに当サイトが整理)。

何が起きたのか(Standard Bankの声明より)

以下は、Standard Bankがニュースルームで公表した声明に記載された内容です。同行は影響を受けた顧客数を公表していません。

  1. 2026年3月23日

    Standard Bankが一部のデータへの不正アクセスを伴う事案を確認したと公表。ただちに環境を保護し、専門家の支援を受けて本格的な調査を始めたとし、取引系システムは安全で、影響を受けた顧客には直接通知するとした。
  2. 4月2日

    最初の続報で、氏名・身分証番号・会社登記番号を影響項目として挙げ、規制当局に報告したと説明。SAFPSへの登録などの対策を推奨。4月13日には連絡先と口座番号を追加した。
  3. 4月14日

    さらなる続報で、影響を受けたのは社内の管理系・文書保管系のシステムだとし、顧客や企業に関するデータが「公開されたとみられる」と説明。影響項目にはのちにB-BBEE区分とVAT登録番号が加わった(「4月16日時点」と表記)。
  4. 4月中旬

    南アフリカの報道によれば、情報規制機関が事案を評価中で、同行に追加情報を求めた。当サイトが2026年9月30日に確認した時点で、同機関がこの事案について結論を公表した形跡はない。
非公表
影響を受けた顧客数(同行は公表していない)
公開
データは「公開されたとみられる」(4月14日、同行)
アクセスなし
取引系の銀行システムと基幹システム(同行の説明)
無料
SAFPSのProtective Registration
影響を受けた情報と、受けていないもの(Standard Bankの声明より)
影響あり(人により異なる)
氏名、身分証番号または会社登記番号、連絡先(電話番号・住所・メールアドレス)、口座番号、B-BBEE区分とVAT登録番号
影響を受けたシステム
社内の管理系・文書保管系のシステム
影響なし
取引系の銀行システムと基幹システムには「アクセスされていない」。顧客の資金に影響はないとしている
カード
カード情報が関係する一部のケースでは、該当する顧客に直接連絡し、カードを再発行しているとしている
同行の対応
信用情報機関の照会やSIMスワップの監視強化、取引監視の追加、24時間体制の不正対策チーム、端末やアプリ内での確認の強化
当局
規制上の通知義務は果たしたとしている
公式の連絡先
個人・プライベートバンキング 0860 123 000 ・法人 0860 109 075 ・不正利用窓口 0800 222 050

読み方の注意:「基幹システムは無事」は「あなたに危険はない」ではない

Standard Bank自身の続報がリスクを挙げています。この情報を使ってあなたになりすましたり、詐欺的に連絡してきたりするおそれがあり、本物に見えるメール・メッセージ・電話や、同意なくあなたの情報を使う試みがあり得る、というものです。身分証番号と口座番号はパスワードのように作り直せないので、このリスクは数週間で消えません。以下の習慣は、数日ではなく何年も続けるつもりでいてください。

この組み合わせが、偽の「銀行からの電話」の台本になる理由

多くの漏えいは、詐欺に必要な材料の片方しか渡しません。今回は両方が一度にそろいます。身分証番号は本物の銀行があなた本人かを確認するときに使う番号で、口座番号はお金の話をするときに使う番号です。「Standard Bankの不正対策部です。末尾1234の口座について、ご本人確認のため身分証番号を確認させてください、こちらでは……と登録されています」という電話は、まさに銀行そのものに聞こえます。これまで、この2つを同時に知っているのは銀行だけだったからです。

偽の「銀行」電話のサイン

  • 最初に身分証番号や口座番号を読み上げて「確認」してくる
  • 口座が危険な状態だ、時間がないと急がせる
  • OTP・PIN・パスワードの読み上げを求める
  • 「安全な口座」への送金を求める
  • 電話を切るな、誰にも言うなと言う

Standard Bankが説明していること

  • パスワードやPINは、求められても誰にも教えない
  • 銀行が電話でOTPやログイン情報を求めることはない
  • 知らない口座への資金移動を求めることはない
  • 怪しいと思ったら切って、不正利用窓口にかける
  • 予期しない連絡は、信頼できる窓口で確かめる

教訓は「詐欺師の声を聞き分ける力をつける」ことではありません。信じるかどうかを決める瞬間をずらすことです。電話が本物かどうかを、その電話の中で決めない。銀行はもともとあなたの身分証番号を知っています。本物の銀行の電話なら、いったん切って自分からかけ直しても何も困りません。

当サイトの視点:家庭と職場で「かけ直しルール」を決めておく

家族や経理担当と、お金に関わる行動を求める電話は、自分で調べた番号にかけ直してから対応すると事前に決めておきます。「すべて知っている」相手も例外にしません。これで、漏えいしたデータが詐欺に加える唯一の要素、つまり「信用」を取り除けます。現地法人がある日本企業なら、本社からの「至急の送金指示」にも同じルールを当てはめてください。身分証番号や口座番号を預かる企業側の教訓は、誰が何件まで閲覧できるかを絞ることで、考え方は 組織のセキュリティ対策、最低限はどこか で扱っています。

同じ年の近い事案は、身分証番号と銀行口座番号が漏れた オランダの通信会社Odidoの情報漏えい と、同じく「相手が自分の情報を知っている」ことが詐欺の決め手になる スペインの電力会社Endesaの情報漏えい です。偽の電話やメッセージの仕組みは フィッシングとは で解説しています。

出典(公開記録)

本記事の事実関係は、以下の公開情報にもとづきます。攻撃者側の主張や、公表されていない数値は扱っていません。

  • Standard Bank「A message from Standard Bank」(2026年3月23日、3月24日のFAQを含む、英語) — standardbank.co.za
  • Standard Bank「An Important Data Incident Update」(2026年4月2日、4月13日更新、英語) — standardbank.co.za
  • Standard Bank「An Important Data Incident Update - 14 April」(FAQを含む、英語) — standardbank.co.za
  • Standard Bank「Scammers turn to phone calls as banks clamp down on fraud」(2024年8月6日、英語) — standardbank.co.za
  • 南部アフリカ不正防止サービス(SAFPS)「Apply for Protective Registration」(英語) — safps.org.za
  • 情報規制機関(Information Regulator)「How to Lodge a Complaint」(英語) — inforegulator.org.za
  • Vuk'uzenzele(南アフリカ政府)「You are entitled to a free credit report」(2023年5月、英語) — vukuzenzele.gov.za
  • IOL「What you need to know about the Standard Bank data breach investigation」(2026年4月15日、英語。情報規制機関の発言の報道としてのみ使用) — iol.co.za

更新履歴

2026-09-30:初版。Standard Bankの2026年3月23日、4月2日(4月13日更新)、4月14日の声明(2026年9月30日に確認した版。影響人数の公表なし)と、SAFPS・情報規制機関・南アフリカ政府の消費者向け情報にもとづく。

次に読む

よくある質問

QStandard Bankの情報漏えいで何が漏れたのですか?
A

Standard Bankの2026年4月14日の続報によれば、影響を受けた情報は人によって異なり、同行がその時点で把握している範囲では、氏名、身分証番号または会社登記番号、電話番号・住所・メールアドレスなどの連絡先、口座番号です。のちにB-BBEE区分とVAT登録番号が一覧に加わりました(「4月16日時点」と表記)。これ以外の項目に影響があった顧客には、直接通知するとしています。

Q預金に影響はありますか?
A

Standard Bankは、影響を受けたのは社内の管理系・文書保管系のシステムで、取引系の銀行システムと基幹システムにはアクセスされておらず、安全に稼働しているとしています。そのため顧客の資金に影響はなく、口座は安全だと説明しています。同行が注意を促しているのは、この情報を使ってなりすましや詐欺的な連絡をされるリスクです。

Qデータは公開されたのですか?
A

Standard Bankは2026年4月14日の続報で、顧客や企業に関するデータが公開される可能性に備えてきたとし、それが『公開されたとみられる』と述べています。本記事は公開場所へのリンクや説明はしません。自分の情報は他人に知られている前提で行動してください。

Q何人が影響を受けたのですか?
A

Standard Bankは声明の中で影響を受けた顧客数を公表していません。ネット上の数字は攻撃を名乗る側の主張で裏付けがないため、本記事では扱いません。

Q「Standard Bankです」という電話が本物か、どう見分けますか?
A

電話の中では見分けられません。詐欺をする側が本物の身分証番号や口座番号を知っている可能性があるからです。Standard Bankは、電話・FAX・SMS・メールで求められてもパスワードやPINを誰にも教えないよう呼びかけ、電話でOTPを含むログイン情報を求めることはない、知らない口座へ資金を移すよう電話で求めることはない、としています。いったん切り、カードの裏など自分で調べた番号にかけ直してください。南アフリカ国内の不正利用窓口は0800 222 050です。

QSAFPSのProtective Registrationとは何ですか?登録すべきですか?
A

Standard Bankが登録を勧めています。南部アフリカ不正防止サービス(SAFPS)のProtective Registrationは無料で、身分証番号に印を付け、加盟する与信事業者があなた名義の申し込みを審査するときに追加の確認をするよう促す仕組みです。SAFPSによれば、オンライン・メール・折り返し電話の依頼で申し込め、身分証の認証済みコピーと住所の証明が必要で、48時間以内に受付番号が発行されます。