対象:デジタルアーツのクラウドサービス(i-FILTER@Cloud、m-FILTER@Cloud(Modern Edition)、m-FILTER MailAdviser Microsoft 365 対応版、FINAL CODE@Cloud、z-FILTER、Desk)を使っている企業・学校・自治体などの管理者と、その利用者。本記事は同社の公式発表にもとづく解説で、攻撃の手順は扱いません。
続報待ち:この記事は公式発表に合わせて更新します
2026年10月25日時点まだ分かっていないこと
- 閲覧された可能性のある情報の項目
- 対象のお客様の数・件数
- 認証情報が取得された経緯
- 社内環境への不正アクセスの範囲
- 業績への影響
同社は10月21日の発表で、業績への影響は精査中とし、「開示が必要な事項が生じた場合には速やかにお知らせいたします」としています。認証情報が取得された経緯や攻撃の手法は、安全に関わるとして公表しない方針です(10月23日の投資家向けQ&A)。
利用組織の管理者が今日やること
自組織が対象のサービスを使っているかを確かめる
対象は次の6つのクラウドサービスです:i-FILTER@Cloud、m-FILTER@Cloud(Modern Edition)、m-FILTER MailAdviser Microsoft 365 対応版、FINAL CODE@Cloud、z-FILTER、Desk。
同社によれば、自組織の環境に導入して使うソフトウェア版は対象外です。ほかのクラウドサービスについても、10月21日正午時点で本件による影響は確認されていないとしています。販売店やパートナー経由で契約している場合は、契約書や管理画面の名前でクラウド版かどうかを確かめてください。
管理者用のパスワードを変える
同社は、6サービスを使うすべてのお客様に、管理者用と利用者用のパスワードの変更を求めています。個別の連絡が来ていない組織も含まれます。
管理者アカウントを複数人で共有している場合は、新しいパスワードを共有する範囲もこの機会に見直します。長くて使い回さないパスワードは パスワード管理ツールの選び方 を参照してください。
利用者用のパスワードの変更を案内する
利用者用のパスワードがあるサービスでは、利用者にも変更を案内します。案内文には「メールのリンクからではなく、いつもの入口からログインして変える」ことを書いておくと、同じ時期に届く偽メールと区別しやすくなります。
同じパスワードをほかのサービスでも使っていた人は、そちらも変える必要があります(パスワードが漏れたか確かめる方法)。
同社からの個別連絡の有無を確かめる
同社は、追加の対応が必要な一部のお客様に個別に連絡するとしています。10月23日のQ&Aでは、閲覧の可能性がある対象のお客様には個別に連絡し、必要な対応を案内しているとしています。
契約の担当者や、販売店からの連絡を受けるアドレスに届いていないかを確かめてください。問い合わせ先は、発表に載っている同社のお客様専用サポート窓口(k-support@daj.co.jp)です。
デジタルアーツを名乗るメールのリンクからログインしない
大きく報じられた事件のあとは、その会社を名乗る「パスワード変更のお願い」の偽メールが出回ることが一般にあります(この事件でそうしたメールが確認されたという発表はありません)。
パスワードの変更は、ブックマークや社内の手順書など、いつも使っている入口から管理画面を開いて行ってください(見分け方は フィッシングとは)。
個人情報を扱う組織として報告が必要かは、個別連絡の内容で判断する
同社は個人情報保護委員会に報告したとしています(10月23日のQ&A)。自組織が預けている情報に個人データが含まれ、閲覧の可能性がある対象として個別の連絡を受けた場合は、自組織としての報告や本人への通知が必要かを、連絡の内容をもとに社内の担当部署と確かめてください。連絡が来ていない段階で、自組織の情報が対象かどうかは公表された範囲からは分かりません。
何が起きたか(デジタルアーツの発表から)
デジタルアーツ株式会社は2026年10月21日、東京証券取引所の適時開示と公式サイトに「当社への不正アクセスに関するお知らせとお詫び」を出しました。10月23日には「不正アクセスに関する投資家・株主の皆様向け Q&A」を公表しています。以下はすべて同社の発表内容です。
2025年7月頃
見つかった不正アクセスの痕跡のうち、最も古いものがこの頃にさかのぼる。2026年10月9日
AIを活用したシステム・製品・社内環境の総点検で、従来の点検では見つからなかった不正アクセスの痕跡を発見。クラウドサービスの運用環境と社内環境の両方が対象。10月9日以降
不正アクセスの遮断、認証情報の交換、影響範囲の調査を優先。対策の途中で公表すると攻撃者に対策状況を知られ、被害が拡大するおそれがあったため、公表はその後としている。10月21日
適時開示と公式サイトで公表。6サービスのすべてのお客様にパスワードの変更を求めた。10月23日
投資家・株主向けQ&Aを公表。ホワイトリストのデータベースが改ざんされていないこと、個人情報保護委員会に報告したことなどを説明。
- 侵入の経路
- クラウドサービスの運用に使う認証情報が第三者に不正に取得され、それを使ってサービスの運用環境に侵入された。社内環境への不正アクセスの痕跡も確認
- 影響
- 対象の6サービスを使う一部のお客様の情報が、第三者に閲覧された可能性がある。項目と件数は公表されていない
- 持ち出し・二次被害
- 10月21日正午時点で、お客様情報の外部への持ち出しは確認されていない。悪用や二次被害の報告もない
- 対象外
- お客様の環境に導入するソフトウェア版。6サービス以外のクラウドサービスは、10月21日正午時点で影響を確認していない(10月23日のQ&A)
- ホワイトリスト
- 侵入者にはデータベースの登録・分類・配信の仕組みにアクセスできる権限や経路がなく、閲覧できる状態にもなかった。改ざんされていないことをログや構成情報などから確認(10月23日のQ&A)
- 製品の機能
- 製品のセキュリティ機能そのものの脆弱性を使った侵入は確認されていない(10月23日のQ&A)
- 同社の対応
- 不正アクセスに使われた認証情報の無効化、運用に使う認証情報の交換、不審なプログラムの停止、サーバー認証鍵の交換。10月21日正午時点で新たな不正アクセスは確認されておらず、監視を続けている。サービスとネットワークの再構築も進めている
- 報告
- 関係機関への報告と協力。個人情報保護委員会には報告済み。ISMAPは制度に沿って報告・対応する(10月23日のQ&A)
- サービスの提供
- 続けている。新規の契約・導入の手続きも受け付けている(10月23日のQ&A)
- 問い合わせ
- お客様・パートナー:お客様専用サポート窓口 k-support@daj.co.jp
運用に使う認証情報が取得された
取得の経緯は非公表(同社)
↓
クラウドの運用環境
6サービスの一部の顧客情報が閲覧された可能性
社内環境
不正アクセスの痕跡。範囲は非公表
ホワイトリストのデータベース
閲覧・改ざんされていない(同社)
↓ 利用組織がやること
管理者用・利用者用のパスワードを変える
6サービスのすべてのお客様が対象。ソフトウェア版は対象外
分かっていること・分かっていないこと
2026年10月25日時点の同社の発表(10月21日の適時開示と公式サイトのお知らせ、10月23日の投資家向けQ&A)をもとに整理しました。続報が出たら、状態の欄を書き換えます。
| 項目 | 発表の内容 | 状態 |
|---|---|---|
| 対象のサービス | i-FILTER@Cloud、m-FILTER@Cloud(Modern Edition)、m-FILTER MailAdviser Microsoft 365 対応版、FINAL CODE@Cloud、z-FILTER、Desk | 確定(同社) |
| お客様の情報 | 一部のお客様の情報が第三者に閲覧された可能性 | 可能性(同社) |
| 閲覧された可能性のある項目 | 書かれていない | 記載なし |
| 対象のお客様の数・件数 | 書かれていない | 記載なし |
| 外部への持ち出し | 10月21日正午時点で確認されていない | 確認されていない(同社) |
| 悪用・二次被害 | 10月21日正午時点で報告を受けていない | 確認されていない(同社) |
| ソフトウェア版 | 本件の対象ではない | 含まれない(同社) |
| ほかのクラウドサービス | 10月21日正午時点で本件による影響は確認されていない | 確認されていない(同社) |
| ホワイトリストのデータベース | 閲覧できる状態になく、改ざんされていないことを確認 | 含まれない(同社) |
| 侵入の経路 | 運用に使う認証情報が不正に取得され、それを使って侵入 | 確定(同社) |
| 認証情報が取得された経緯・攻撃の手法 | 公表を控えるとしている | 記載なし |
| 社内環境への不正アクセス | 痕跡を確認。範囲や影響は書かれていない | 記載なし |
| 不正アクセスの期間 | 痕跡は2025年7月頃にさかのぼるものを含む。発見は2026年10月9日 | 同社の発表(一部は2025年7月頃から) |
| 新たな不正アクセス | 10月21日正午時点で確認されていない。監視を継続 | 確認されていない(同社) |
| 個人情報保護委員会への報告 | 報告済み | 確定(同社) |
| 業績への影響 | 精査中 | 調査中 |
「閲覧された可能性」と「持ち出し」の違い
同社の発表は、お客様の情報が第三者に見られた可能性があるとする一方、外部に持ち出された事実は10月21日正午時点で確認されていないとしています。見られた可能性がある以上、パスワードの変更は持ち出しの有無にかかわらず求められています。本記事では、この2つを分けて書いています。
項目が分からないとき、管理者向けサービスで起きうること
閲覧された可能性のある項目は公表されていません。一般に、業務用のクラウドサービスの顧客情報には、契約組織の名前、担当者の名前・メールアドレス・電話番号、管理者アカウントの情報などが含まれることがあります(今回これらが含まれたという発表はありません)。
一般に起こりうること
- 契約や更新、パスワード変更をうたうサービス提供元を名乗る偽メール
- 担当者の名前や契約の事情を知っているかのような、本物らしい問い合わせ
- 管理者アカウントに入られると、フィルタリングやメールの設定を変えられるおそれ
自分でできること
- パスワードを変え、管理画面はいつもの入口から開く
- 同社からの連絡かどうか迷ったら、発表に載っている窓口で確かめる
- 管理者アカウントで追加の認証が使えるなら有効にする(多要素認証の選び方)
同じ10月には、業務用のメール配信サービスで、提供元への不正アクセスが利用企業に及んだ事案も公表されました(ブラストメールの不正アクセス)。2つの事件は別のもので、原因も異なります。
運営者が見直すこと
原因の詳細は公表されていないため、ここでは公表された経緯から言えることに絞ります。
運用に使う認証情報を、人のアカウントと同じように棚卸しする
今回、侵入に使われたのはクラウドサービスの運用に使う認証情報でした。同社は対応として、運用に使う認証情報とサーバー認証鍵の交換を挙げ、再発防止として認証情報の管理とアクセス管理の強化を掲げています。
自社でも、サーバーやクラウドの管理に使うアカウント、APIキー、SSHの鍵などを一覧にし、誰が・どこから使うか、最後にいつ交換したかを書き出すのが最初の1つです(資産棚卸しチェックリスト)。
「正しい認証情報での侵入」を見つけるための記録を残す
痕跡には2025年7月頃にさかのぼるものも含まれ、同社によれば従来の点検では見つかっていませんでした。同社は、監視・記録体制の強化と早期に検知できる体制づくりを再発防止に挙げています。
正しい認証情報が使われると、ログイン自体は成功として記録されます。一般に、運用アカウントのログインを「いつ・どこから・どの端末で」まで記録し、運用担当者の作業予定や普段の接続元と食い違うものを定期的に見ることが、気づくための手がかりになります。記録の保存期間が短いと、さかのぼって範囲を調べられません。
提供元の事故に備え、契約しているクラウドサービスの管理者情報を一覧にする
利用組織の側では、提供元から「すべてのお客様はパスワードを変えてください」と求められたときに、どのサービスの、どの管理者アカウントを、誰が変えるのかがすぐ分かることが大切です。
契約しているクラウドサービスごとに、管理者アカウントの持ち主、契約の担当者、提供元からの連絡を受けるアドレスを一覧にしておきます。提供元が侵害された場合の考え方は レンタルサーバーが不正アクセスされたとき も参考になります。
出典(公開記録)
本記事の事実関係は、以下の公開情報にもとづきます。公表されていない攻撃の手法や件数は推測していません。
- デジタルアーツ株式会社「当社への不正アクセスに関するお知らせとお詫び」(2026年10月21日、適時開示) — daj.jp(PDF)
- デジタルアーツ株式会社「当社への不正アクセスに関するお知らせとお詫び」(2026年10月21日、公式サイト) — daj.jp
- デジタルアーツ株式会社「不正アクセスに関する投資家・株主の皆様向け Q&A」(2026年10月23日) — daj.jp(PDF)
更新履歴
2026-10-25:初版。デジタルアーツの10月21日の適時開示・公式サイトのお知らせと、10月23日の投資家向けQ&Aにもとづく。閲覧された可能性のある項目や件数などの続報が出たら更新します。
次に読む
- 提供元への不正アクセスが利用企業に及んだ事案:ブラストメールの不正アクセス
- 認証情報が入口になる事案:2026年の侵入は認証情報から
- 備え:多要素認証の選び方 / パスワード管理ツールの選び方
- 偽メールへの備え:フィッシングとは
- 2026年の他の事案:情報漏えい・サイバー攻撃の一覧(国内・海外)