対象:自社のサーバー、VPN装置、会員データ、外部サービスを管理している担当者と、会員として登録しているサービスの漏えいが気になる人。本記事は当サイトが10月に公開した記事と米CISAの公開情報をまとめたもので、攻撃の手順は扱いません。
10月に起きたこと:数字で見る
「115本」は当サイトの記事の本数です
当サイトが10月に公開した第1報の記事だけを数えたものです(上の事案のうち11月1日公開の記事は含みません)。国内の事件65、海外の事件28、国をまたぐ事件4、脆弱性18の合計です。取り上げなかった事件は入っておらず、国や機関が集計した統計ではありません。前の月と比べて「事件が増えた」と読むための数字としては使えません。
悪用が確認された脆弱性:KEV 36件の中身
KEVは、米CISAが「すでに悪用が確認された」と判断した脆弱性の一覧です。2026年10月1日から31日の追加は36件で、一覧全体では1,766件になりました。製品の種類で分けると、次のとおりです。
境界機器・リモートアクセス製品 11件
Plex・PHP・Ahsay・Zammad 10件
そのほか(Windows・Linuxカーネル・GitLabなど) 10件
2015〜2023年公表の古い脆弱性 5件
当サイトに解説のあるものは、リンクを付けました。解説のない項目は、KEVの記載のとおりの一覧です。
| 種類 | 製品とCVE | 追加日 | 当サイトの解説 |
|---|---|---|---|
| 境界機器 | Ivanti Connect Secure CVE-2026-104935 | 10月13日 | 境界機器の脆弱性まとめ |
| 境界機器 | Ivanti Connect Secure CVE-2026-111357・CVE-2026-118527 | 10月30日 | Ivanti Connect Secure 続報 |
| 境界機器 | Palo Alto Networks PAN-OS CVE-2026-0322 | 10月14日 | 境界機器の脆弱性まとめ |
| 境界機器 | Fortinet CVE-2025-61624(FortiOSなど) | 10月16日 | 境界機器の脆弱性まとめ |
| 境界機器 | Fortinet FortiMail CVE-2026-104286 | 10月1日 | なし |
| 境界機器 | Cisco Secure Email Gateway CVE-2026-76519 | 10月14日 | 境界機器の脆弱性まとめ |
| 境界機器 | Cisco Secure Firewall ASA CVE-2026-76418 | 10月29日 | Cisco ASA・FTDのVPN |
| 境界機器 | Citrix NetScaler CVE-2026-88779 | 10月4日 | CVE-2026-88779の解説 |
| 境界機器 | Arista VeloCloud Orchestrator CVE-2026-114625 | 10月23日 | VeloCloud Orchestrator |
| 境界機器 | BeyondTrust Remote Support CVE-2026-102764 | 10月16日 | なし |
| 古い脆弱性 | ISC BIND CVE-2015-5477、ProFTPD CVE-2015-3306、Apache Struts CVE-2016-3081、ONLYOFFICE Docs CVE-2021-3199、Strapi CVE-2023-22894 | 10月8日(5件同時) | なし |
| 同種の製品 | Plex Media Server CVE-2026-96652・96654・96655・96656 | 10月20日 | Plex Media Server |
| 同種の製品 | PHP CVE-2026-109618・CVE-2026-109619 | 10月26日 | PHPの重大な修正リリース |
| 同種の製品 | Zammad CVE-2026-102489・CVE-2026-102490 | 10月2日 | DIVD不正アクセスとZammad |
| 同種の製品 | Ahsay AhsayCBS CVE-2026-105133・CVE-2026-105134 | 10月14日 | なし |
| そのほか | SiteGuard Server Edition(国産)CVE-2026-106931 | 10月20日 | SiteGuard Server Edition |
| そのほか | Linuxカーネル CVE-2026-46300 | 10月28日 | Linuxカーネル CVE-2026-46300 |
| そのほか | VMware ESX CVE-2026-41709 | 10月28日 | VMware ESXのログ不備 |
| そのほか | GitLab CVE-2026-97229 | 10月29日 | GitLabの重要な修正 |
| そのほか | Adobe Commerce CVE-2026-48356 | 10月27日 | Adobe Commerce |
| そのほか | Google Brotli CVE-2026-111497 | 10月27日 | Brotli |
| そのほか | Collabora Online CVE-2026-110447 | 10月23日 | Collabora CODE |
| そのほか | Microsoft Windows CVE-2026-96951、Atlassian CVE-2026-21589、Siemens Software Center CVE-2026-110936 | 10月13日・15日・20日 | Atlassianのみ境界機器の脆弱性まとめ |
「境界機器」「同種の製品」「そのほか」の区分は、当サイトが付けたもので、KEVの区分ではありません。
当サイトの見方:10月のKEVで目立つのは、新しい種類の弱点ではなく、境界機器と、更新が止まりがちな古い製品です。10月8日に同時に入った5件は、公表から3〜11年たっています。使っていなくても、古いまま動き続けている環境がないかを確かめる合図になります。優先順位の付け方はCVEの直す順番の決め方(CVSS・EPSS・KEV)にあります。
国内で件数の大きかった漏えい
下の表は、当サイトの記事にある公式発表の数字をそのまま並べたものです。「件」は記録の数、「人」は重複を除いた人数の概数です。「可能性」と書かれたものは、流出が確定したとは発表されていません。単位と確度が違うため、件数の大きさの順位としては読めません。日付は各社の発表日です。10月に発表された事案の一部(クラブツーリズム、ティンパンアレイ、Northflank、Chainalysis、Linux CVE-2026-98432)は、当サイトの記事の公開が11月1日です。
| 組織・サービス | 発表日 | 数字(発表の単位) | 確度(発表の書き方) | 当サイトの記事 |
|---|---|---|---|---|
| Eストアー(ショップサーブ) | 10月16日(最終報) | 約2,335万6,000人 | 漏えいした(購入者・店舗運営者・アフィリエイターの合計、重複を除いた概数) | ショップサーブ |
| 良品計画(MUJIアプリ) | 10月30日 | 最大約2,726万件 | 流出した可能性(退会者を含む) | MUJIアプリ |
| クラブツーリズム | 10月31日(第1信) | 約432万件 | 流出した可能性 | クラブツーリズム |
| 花キューピット | 10月28日 | 最大4,238,242件 | 漏えいした(対象は「該当する可能性のあるお客様」) | 花キューピット |
| 松屋フーズホールディングス(松屋公式アプリ) | 10月30日 | 2,377,127件ほか(アプリ会員2,000件、最大3,000件) | 漏えいした | 松屋 |
| ソニーネットワークコミュニケーションズ(So-net) | 10月27日 | So-net会員2,141,986件、plala(Sコース)会員443,495件 | 漏洩を確認した | So-net |
| エイチ・ツー・オー リテイリング(H2O ID) | 10月19日 | 約126万件 | 漏えいした(ほぼ全てのH2O ID会員の一部の情報) | H2O ID |
| ワールド(子会社ティンパンアレイ) | 10月30日 | 延べ約120万件 | 流出した可能性 | ティンパンアレイ |
漏れた項目は事案ごとに違います。たとえばMUJIアプリはメールアドレス・生年月日・性別で、氏名や住所は含まれないと発表されています。花キューピットはユーザーID・暗号化されたパスワード・メールアドレスです。自分の項目は、各記事で確かめてください。
件数と、自分が対象かどうかは別です
「件」は記録の数なので、人数とは一致しません。退会者が含まれる事案も多くあります。対象かどうかは、各社が個別に送るとしている連絡と、公式サイトのお知らせで確かめます。
10月の5つの流れ
(a) サービス提供元・SaaSを通した漏えい
自社に落ち度がなくても、顧客名簿を預けた先で漏れることがあります。10月は、メール配信、防災メール、航空会社の予約の委託先、IT管理の基盤で事案が出ました。
- ブラストメール:全契約者の会社名・担当者名などと、345契約の配信先リストなどの漏えいが確認された
- SpeeCAN RAIDEN:自治体の防災メール等に使われるサービスで、メールアドレス最大約313.6万件(推定)などが漏えいした可能性
- JAL・ANAの予約の委託先:JAL・JTAは約92,000名、ANAは約37,800名の予約情報が、委託先経由で参照された形跡があると公表された
- ConnectWise Cloud Backup:アプリの認証情報への不正アクセスでサービスが止まり、クラウド事業者は2,250超のテナントへのサインイン試行を公表した
(b) 会員・アプリのデータベース
小売・外食・通信の会員データベースやアプリの管理システムからの漏えいが、10月の後半に続きました。上の表のほか、10月中に当サイトが記事にした事案が複数あります。
- MUJIアプリ(最大約2,726万件の可能性)
- 松屋公式アプリの管理システム(2,377,127件ほか)
- 花キューピット(最大4,238,242件)
- H2O ID(約126万件)
(c) 暗号資産の流出
9月下旬から10月末にかけて、取引所と関連サービスの事案が重なりました。数字は各社の発表のとおりで、原因の多くは調査中です。
- Binance:10月29日の不正な出金の影響額を約63億ドルと見積もり、損失は同社が負担すると発表した
- Bitget:第三者のセキュリティ製品のゼロデイを突かれ、約3.875億ドルが流出したと発表した(事案は9月下旬で、当サイトの記事は10月に公開)
- Bithumb:社内モバイルグループウェアへの不正アクセスで、顧客844名の個人情報が露出したと報じられている
- Polymarket:第三者の提供元が侵害されたとして取引を一時停止(スクリプト経由と報じられている)し、利用者に補償すると説明した
(d) AI開発基盤とAIを使った攻撃
AIのAPIキーを預かる基盤、AI向けの開発ツール、ホスト型AIで事案が出ました。AIの能力を使う攻撃の報告も続いています。
- Northflank:保存された環境変数すべてを、復号されたものとして扱うよう案内。AI APIキーの不正利用が報告された
- OpenCode:一部の利用者が連携した外部AI事業者のAPIキーに影響
- Zeabur:環境変数3,218,965件と321,810アカウントの情報が読み取られたと公表
- Cursorの拡張機能:改ざん版の「Claude Code」拡張機能が、マーケットプレイスで約11時間配布された
- Chainalysis:同社が "offensive agentic techniques" と呼ぶ手法で不正にアクセスされたと公表
- Cloudflare Workers AI:他の顧客のリクエストのデータが応答に混ざる事象が155件あったと公表
別の話として、Linuxカーネルの CVE-2026-98432 は、AI企業の研究チームが実験環境でリモートコード実行を実演したと報じられています。同社自身の報告にもとづく話で、報道機関は検証していません。確認した範囲では、実際の攻撃は確認されておらず、KEVにも入っていません。全体像はAIを使った攻撃と守る順番にまとめています。
(e) 境界機器
KEVの11件に加え、Ivanti Connect Secureは10月13日と30日の2回、別の脆弱性で追加されました。更新だけでは、更新の前に入られた場合の痕跡は消せません。
- 悪用が確認された境界機器の脆弱性まとめ(10月中旬)
- Ivanti Connect Secure CVE-2026-111357・CVE-2026-118527
- VeloCloud Orchestrator CVE-2026-114625
- VPN機器とリモートアクセスの守り方
11月にやること
KEVに入った境界機器を先に直す
VPN装置・ファイアウォール・メールゲートウェイの製品名と版の一覧を作り、KEVに入ったものは数日以内に修正版へ上げます。更新の前にログを保存し、管理画面に届く送信元を管理用ネットワークに絞ります。
顧客名簿を預けている外部サービスを棚卸しする
メール配信、予約、会員管理、バックアップなど、顧客のメールアドレスや氏名を預けているサービスを一覧にします。契約を終えたあとにデータが残っていないかも確かめます。
基盤の事案があったら、預けた鍵を入れ替える
クラウドやAI開発基盤で事案が公表されたら、そこに保存した環境変数・APIキー・トークンを入れ替え、利用状況に身に覚えのない記録がないかを確かめます。
侵害を公表した企業を名乗るメールに備える
漏えいの公表後は、その企業を名乗るメールが増えやすいです。メールのリンクからはログインや入力をせず、公式サイトのお知らせと照らし合わせます。対象かもしれない人は、同じパスワードを使い回していないサービスから順にパスワードを変えます。
メールの見分け方はフィッシングとはにあります。
出典
- 米CISA「Known Exploited Vulnerabilities Catalog」(JSONフィード。2026年10月1日〜31日の追加分を当サイトが集計) — cisa.gov
- 当サイトの記事:境界機器の脆弱性まとめ、ショップサーブ、MUJIアプリ、クラブツーリズム、花キューピット、松屋、So-net、H2O ID、ティンパンアレイ(各記事に公式発表の出典があります)
- 第1報の本数は、当サイトの日本語記事のうち、2026年10月に公開した速報の記事を数えたものです
次に読む
- 年間の一覧:2026年の情報漏えい・サイバー攻撃 年表
- 境界機器の守り方:VPN機器とリモートアクセスの守り方
- 優先順位の決め方:CVEの直す順番の決め方(CVSS・EPSS・KEV)
- AIを使った攻撃:AIを使った攻撃と守る順番
- 侵害の確かめ方:サーバーが不正アクセスされたか調べる方法